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第８章「最後の戦い」 岡、洋、修平はロドリゲスからエネルギー鉱石を守るため、インディア火山の洞窟を進んでいた。洞窟の中は今まで見たことのないようなモンスターで溢れている。 「おかしいな。こんなモンスターは今までこの洞窟には生息していなかったはずだが・・・。」 岡がつぶやくと、洞窟の奥の方にロドリゲスが見える。３人はこっそりロドリゲスに近づいた。ロドリゲスはウラン鉱石を採取しているようだった。 おまけにここは狭い洞窟の中だ。強力な気功を使うにはあまりにも危険すぎる場所である。岡が言った。 「いいか、我々の目的はウラン鉱石をロドリゲスという男から守ることだ。決して倒そうなどと考えてはいけない。」 岡の指示に洋と修平はうなずいた。３人はロドリゲスの前に立ち塞がった。 「やはり来たか。思ったより早いな。全然取れなかったよ。」 ロドリゲスはそう言って、ウラン鉱石の袋を持とうとしたが、袋がない。忍者の洋が一瞬の隙を突いて、袋をかすめ取ったのである。 「ほう、凄いな。まあ、こんなはした量の鉱石では何もできんからな。」 ロドリゲスはそう言うと、また消えてしまった。３人は目的を達成した。しかし、ウラン鉱石の袋からモンスターが飛び出した。 どうやらロドリゲスは袋をかすめ取られることを見越して、ウラン鉱石をモンスター化させていたようである。 「モンスターか！放射線を放っているぞ！俺がシールドを張ろう。あとは頼んだぞ。」 岡はシールドを張り、修平に攻撃を促した。 「お安い御用だ。」 修平はそう言うと、得意の剣術でモンスターを粉々に砕いた。３人は洞窟から脱出した。そこには浮上しているロドリゲス・ブルクを見上げているロドリゲスがいた。 そして、３人の目の前でロドリゲスは再び姿を消した。ロドリゲス・ブルクに戻ったのだろう。洋はつぶやいた。 「これからが本当の戦いになるかもしれない・・・。」 その頃、シュヴィで戦っていたファンタ、クリス、佑馬、達郎の４人は追いついたアドリア海軍の助けもあって、ほとんどのモンスターを倒していた。 最後に巨大なモンスターを倒すと、４人とアドリア海軍は歓声を上げた。 「あれは何だ！」 達郎の叫び声を聞いて、北西の空を見上げると、そこには浮上したロドリゲス・ブルクの姿があった。 「一体、何が起こったんだ。とりあえずケバプハカセの元に戻ろう。」 ファンタはそう言うと、クリスに合図してジェットスクーターに乗り込んだ。クリスもうなずき、ファンタに続いた。 佑馬と達郎はケバプシティに向かう２人を見送った。佑馬が言った。 「しかし、ファンタと一緒にいた女性は一体、誰だったんだろう。」 ファンタとクリスがケバプシティに到着する頃には、ジェットスクーターは本当にフラフラになっていた。 もうムックの髪の毛のエネルギーがなくなろうとしているのだ。２人は不時着同然でケバプシティに到着した。 「ケバプハカセ。あれは一体、何が起こったのでしょうか。」 「うむ。何でもアドリア海軍からの情報によると、君達の友達が浮上させた可能性が高いとのことだ。」 ファンタの問いにケバプは答えた。クリスが言った。 「ファンタさん、私達も行きましょう。きっとポーラさんがいるから、無茶なことにはならないと思うけど・・・。それでも心配じゃない。」 クリスはアクティーの性格上、無理なことを考えている気がしてならなかった。それにはファンタも同感だった。しかし、ロドリゲス・ブルクまで行く手段がない。 ジェットスクーターのエネルギーもなくなってしまった。ファンタはケバプハカセの顔を見た。あの独特の髪形がファンタの目に入る。 ファンタはあることを思いついた。これは一種の賭けであるが、うまくいく可能性は十分だ。ファンタは西洋刀を抜いて言った。 「ケバプハカセ、すみません。」 「ああっ。バランスがー。」 ファンタはケバプの髪の毛を切り落としたのだ。ケバプは慌てふためいている。ファンタはその切り落としたケバプの髪の毛をジェットスクーターに接続した。 ジェットスクーターは動き出した。ファンタの予想は当たった。 浮遊力を持つケバプの髪の毛には、同じく浮遊力を持つムックの髪の毛と同じ成分が含まれていると思ったのだ。 動き出したジェットスクーターにファンタとクリスは乗り込んだ。２人はアクティーとポーラのいるロドリゲス・ブルクへと向かっていった。 ファンタとクリスはロドリゲス・ブルクに到着した。２人はアクティーとポーラを探した。 幸い２人が着陸した場所はコクピットに比較的、近い場所だったので、容易にコクピットを見つけ出し、アクティーとポーラを発見した。 「良かった。アクティーさんもポーラさんも無事だったみたいね。」 クリスはそう言って、アクティーとポーラに駆け寄った。ファンタもクリスに続いた。そして、ポーラが口を開いた。 「アクティー君。とりあえず原子炉を停止させようよ。原子炉が動いているまま、このロドリゲス・ブルクを壊すのは危ないよ。 ハヴェリでも聞いたでしょ。放射能が外に飛び散ったら、ここの世界の人達や海にいる生き物達に迷惑じゃない。」 ポーラは今までアクティーを納得させる、このロドリゲス・ブルクを動かさずに済む理由を考えていたのだ。これにはアクティーもうなずかざるを得なかった。 アクティー、ポーラ、ファンタ、クリスの４人はコクピットを離れ、原子炉の方に向かっていった。しかし、４人の前に突如、ロドリゲスが立ちはだかった。 「正直言って、侍リングワールドの人々が、ここまで強いとは思わなかったぞ。私が生み出したモンスターを次々と倒していくのだから。 だが、まだ私は負けたわけではない。私には私自身が残っている。そして、このロドリゲス・ブルクもある。まずは定子の敵の君達から倒すことにしよう。」 ロドリゲスはそう言うと、次々と攻撃気功を放ち、４人を襲った。その威力は今までの中で最強だった。しかし、４人も負けてはいない。 この世界に来てから長男戦隊の戦いを自分の目で見てきた。その中で習得した技もある。その技でロドリゲスに反撃した。 「なかなかやるな。だが、これはどうだ。ムックの力の恐ろしさを見るがいい。」 ロドリゲスは自分の体に気功を掛け始めた。するとロドリゲスは熊の姿になったのである。熊の姿のロドリゲスの攻撃力は抜群だった。 ４人は気功も駆使して反撃した。ここで負けるわけにはいかないのだ。４人はまだまだ戦えるが、ロドリゲスも余力があるように見えた。 「ほう、ここまで強いとはな。ロドリゲス・ブルク機関部で待ってるぞ。」 ロドリゲスはそう言い残すと、またもや消えてしまった。 「くそっ。また逃がしたか。」 アクティーは悔しそうだ。 「とりあえず今は原子炉を目指しましょう。」 ポーラはそう言って、設計図を取り出した。しかし、原子炉までの道のりは設計図からは読み取れなかった。 ４人はモンスターが徘徊するロドリゲス・ブルクの中を、原子炉を求めて探索するしかなかった。 アクティー、ポーラ、ファンタ、クリスの４人は原子炉に辿り着いた。 「よし、突入して原子炉を停止させるぜ。」 アクティーは原子炉に突入しようとし、ポーラ、ファンタ、クリスも後に続こうとした。 「死ぬ気か！」 どこからか聞こえてきた声が４人を制止させた。その声の主はミハイルであった。 「この部屋の向こうの放射線量は高い。生身の人間が入ったら本当に死ぬぞ。」 ミハイルはそう言うと、扉の横にあるボタンを押した。扉の向こうで音がしている。 「少々停止には時間が掛かるかもしれんが、これでじきに原子炉は停止する。原子炉の周りも全てセメントとガラスで遮蔽した。 たとえこのロドリゲス・ブルクが海に沈んだとしても、放射能漏れの心配はない。」 ミハイルの言葉にファンタは深く頭を下げて言った。 「ミハイル博士。ありがとうございます。」 「ファンタ君、私は当然のことをしたまでだ。このロドリゲス・ブルクは私が作った。作ったものに対して責任を持つのは開発者として当然のことじゃないか。 私は十分に悩んだ。科学者は考えているだけでは駄目だ。常に前に進まないとな。このロドリゲス・ブルクは幸い、今は海の上にあるようだ。 ムック像を取り外して海に沈めるのが一番いい壊し方だろう。ムック像は機関部にある。ムック像を取り外してもヒステリシス現象でしばらくは浮いていられるはずだ。 その間にこの原子炉の向かい側にあるデッキに来てくれ。私が脱出用の飛行船を用意しておく。」 ４人はミハイルに感謝し、ムック像を取り外すため、ロドリゲスが待つ機関部へと向かっていった。 機関部に到着したアクティー、ポーラ、ファンタ、クリスの４人は驚いた。そこには全身を髪の毛に覆われているクロムックがいたのだ。 そして、ロドリゲス・ブルクにムック像が接続されていないのだ。そのクロムックは４人を見るなり、襲い掛かってきた。 「小川理論だ。ロドリゲスはムックの抜け殻を被ることによって、さらなる力を手に入れたんだ。」 ファンタが叫ぶと、ポーラが言った。 「でも、ムック像が取り外されたとなると、もう少しでこのロドリゲス・ブルクは沈んじゃうことに・・・。」 「そういうことだろうな。奴は本当に全力を出している。俺達も全力で戦おう。これが最後の戦いだ。」 アクティーが鼓舞すると、ポーラ、ファンタ、クリスはうなずいた。そして、クリスが言った。 「そう。この戦いが終わる時が、本当に世界が変わる時。」 クリスの言葉を聞いて、アクティー、ポーラ、ファンタにも力が入る。４人は強化されたロドリゲスと激戦を繰り広げた。 ４人はかなりのダメージを受けたが、それに比例してロドリゲスもダメージを受けている。ここまで来た以上、もう負けるわけにはいかない。 ４人のその思いが、ついにロドリゲスを破った。そして、ムックの脱げ殻からロドリゲスが出てきた。その体はモンテルの時と同じように老化が進んでいた。 ロドリゲスは抵抗した。だが、その力は弱々しいものだった。ロドリゲスはつぶやくように言った。 「私は負けない・・・。私はＡＢＥ様のご意志を継ぐ者・・・。ムック帝国を作る者・・・。ムックが差別されない社会を・・・。私はなぜかムックとして生まれた・・・。 突然変異かエスタ科学党による遺伝子操作の結果なのかはわからない・・・。ムックとして生まれた私と兄弟は子供の頃、どんな思いをしたことか・・・。 ムックは成長が遅い・・・。だから・・・。同じムックであるＡＢＥ様がエスタの指導者になられて世の中が変わると思った・・・。 だが、ＡＢＥ様は志半ばに倒された・・・。私がＡＢＥ様のご意志を・・・。私がやらねば・・・。差別のない社会を・・・。」 ４人はその言葉でロドリゲスの真意がわかった。ポーラとファンタがロドリゲスにとどめを刺そうとした時、アクティーが２人を止めた。 そして、臨時政府から預かった逮捕状を見せて言った。 「俺達はロドリゲスを逮捕することが目的だ。これだけやれば十分だろう。ロドリゲス。国家予算横領と政治家としての背任の罪で逮捕する。 あんたの真意はよくわかった。だが、やり方が強引だった。昔の俺のように・・・。」 アクティーはロドリゲスを取り押さえた。ポーラが言った。 「アクティー君。変わったね。」 「そうか。俺はこの中で一番変わったのはクリスだと思うが。」 アクティーはそう言って、クリスの方を見たが、クリスはいない。しばらくして、クリスは老化したモンテルを連れてきた。 「一緒に連れていきましょう。」 クリスの言葉にアクティー、ポーラ、ファンタはうなずいた。４人はロドリゲスとモンテルを連れて、ミハイルが待つ飛行船へと向かった。 ミハイルは全員が乗ったことを確認すると、飛行船を動かした。一方のロドリゲス・ブルクは全く沈む気配がない。そして、ロドリゲスが突然、笑い出した。 ロドリゲス・ブルクの中には誰もいないのに、勝手に向きを転換して、こちらを向いたのだ。ロドリゲスはロドリゲス・ブルクをモンスター化していたのである。 ロドリゲス・ブルクは機関砲で４人に攻撃した。ミハイルは飛行船を動かして、うまく機関砲をよけると言った。 「これは・・・一体、どういうことだ・・・。絶対に考えられない・・・。こんなことはあり得ない・・・。」 ミハイルの言葉を聞いて、ロドリゲスが言った。 「・・・私は・・・最初に戦った時から・・・君達には勝てないと思っていた・・・。だからロドリゲス・ブルクに・・・託したのだ・・・。 定子の敵・・・私自身の敵・・・を取ってくれと・・・。そして、ＡＢＥ様のご意志を継いだ・・・私の意志を継いでくれと・・・。 もうロドリゲス・ブルクは機械じゃない・・・。科学の力をも凌駕する生命体よ・・・。ハッハハッ。」 ロドリゲスは最初に４人と戦った時から自分が敗れることを見越していたのだ。そして、ロドリゲス・ブルクをモンスター化した。 機関部で戦った時にロドリゲスがあまり強く感じられなかったのは、このモンスター化に相当のムックの力を使ったからだ。 ４人は飛行船の甲板の上に立つと、それぞれの武器を構えた。アクティーが静かに言った。 「いくぞ。」 ポーラ、ファンタ、クリスはうなずいた。ロドリゲス・ブルクは機関砲で攻撃を続けた。４人は機関砲の攻撃をよけると、武器、気功、必殺技を使って反撃した。 その攻撃はロドリゲス・ブルクにそれなりのダメージを与えているように見えるのだが、相手が大き過ぎて、相対的には大打撃にはならない。 加えてロドリゲス・ブルクは自己修復機能を備えているようで、与えたダメージもすぐに回復されてしまう。 「いいか。私の指示をよく聞け。」 甲板上のスピーカーから飛行船の操縦室にいるミハイルの声が聞こえた。 「宇宙太陽発電の受信装置を破壊せよ。これがある限りロドリゲス・ブルクは宇宙から送られるエネルギーを使って自己修復を繰り返す。」 宇宙太陽発電の受信装置はここから見えるが少々遠い。ポーラが武器で破壊を試みるのだが、標的が遠過ぎて、なかなか当たらない。 「ロドリゲス・ブルクの下方にあるエネルギー貯蔵システムを破壊せよ。あれには大量のエネルギーが貯蔵されている。 たとえ宇宙発電装置を壊したとしても、あれがある限り超長期戦は避けられない。」 ロドリゲス・ブルクの下方は飛行船からは死角になっており、全く攻撃することができない。４人は苦しくなってきた。 |